ネクタイ。
「だから…ココをこうやって…」
「…こうですか?」
「違う…」
「えっ…」
じーっと固まって動かなくなった岩瀬をクスリと笑い。
「もう一回してみるからな。よーっく見とけよ?」
「はい!」
石川は岩瀬のネクタイをスルスルと結んでいく。それはまるで魔法のような手さばきで…
つい、ウットリと見惚れていた岩瀬は、結び終わって下から見上げてくる石川の視線を感じた。
「…基寿…本当に覚える気があるのか?」
「勿論ですよvv」
「…どうだか…」
「ありますって!で、覚えて悠さんのネクタイを毎朝!結ぶんですから!!!」
「……」
先ほどまで楽しそうにしていた石川が動きを止める…
「悠さん?ドウカしましたか?」
「…基寿は俺が結ぶんじゃ満足できないのか…?」
ポツリと呟いた言葉は意外な内容で…
岩瀬は驚きの余り目を見開いた。
「悠さん…」
岩瀬の声でハッと我に返った石川は、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「忘れろ!今すぐ忘れるんだ!」
「無理です!そんな可愛いこと忘れるはずがないでしょうvv」
ギュッと抱きしめる腕に力を込め、岩瀬は可愛すぎる恋人にそっと提案した。
「じゃあ、交代で結びましょうねvv」
「なっ…!」
「それだといいでしょう?悠さん」
「…好きにしろ…」
赤くなってソッポを向く石川にチュッとキスを送り―
「はいvv好きにします!で…もう一度教えてくれますか?」
「…お前なー…」
申し訳なさそうに、お願いしてくる岩瀬を呆れた顔で見やりながら…
「仕方ないな…」と嬉しそうに微笑むのであった。
06.10.29 UP |