5000Hit お礼SS

- 木蓮夜話 - エピローグ

-やっと、貴方に会えた… もう、離さないでね…離れないでね…-


                  **  **  **  **  **  **




「…さん…石川さん…!!…目を覚ましてください…!」

石川は優しい声に起こされる―
そして、ゆっくりと目を開けると… そこには。
優しく微笑む岩瀬と、泣きそうな顔の橋爪と、安心した顔の加藤がいて―

「…石川さん…よかった…」
橋爪の心の底からの安堵に、少し困った表情で石川は礼を言う。

「有り難うDr…そして心配かけてゴメン…」
「いえ…私よりも…」

そこで、橋爪はチラリと岩瀬を見て…

「岩瀬と加藤のお陰です…」
「加藤…?」
「はい。加藤がイロイロと調べてくれたんですよ?だから、助けることも出来ました。」
「そっか…有り難う、加藤。迷惑を掛けたな…」
「いえ…。隊長が元気になってくれただけで…十分です」
「…加藤…」
「隊長と補佐官は十分に休んでくださいね?体力が落ちてると思うので…では。これで私は失礼します。」
「あぁ…。本当に有り難う…」
「いえ…。」

そう言って、加藤はメディカルルームを去っていった。

暫くの間、橋爪が石川と岩瀬の脈拍や血圧などの一通りの検査をして―

「加藤の言うとおり、特に石川さんは体力の低下が見られます。本当は2・3日の休養が必要なのですが…」
「…そんなには休めないよ…」

橋爪の提案に、石川は渋い顔をする。
橋爪はそんな石川を予想していた。と、云わんばかりで…
一つ、溜息をついて―

「最低でも、明日一日は休養を。それ以下は認めませんから。」
ニッコリと微笑んで(目は笑ってないが)、橋爪は有無を言わさず隊長と補佐官の一日休養を命じたのであった―



    **  **  **  **



「西脇さんには私から連絡しておきます。」と、何も聞いてこない橋爪に、感謝しつつ…
石川と岩瀬は自室へと戻った。

「…なんだかイロイロとあり過ぎて…」
「そうですね…でも。今は休んでください…」
「基寿…」
「今回、悠さんが倒れて…でも俺は何も出来なくて…こんな悔しい思いは久々です…」
「基寿…」

岩瀬が思いつめたような表情で、石川の体を抱きしめる。
そんな岩瀬に石川は…

「何もって…基寿が助けてくれたじゃないか…。」
「あれは!不可抗力というか…加藤さんのお陰というか…」
「でも。基寿に助けられたんだよ…俺は」
「悠さん…」

そう。あの不可思議な空間の中で、岩瀬の事を想っていたから、無事に戻れたのだと思う。
それに―

「それに…基寿が来なかったら…静音さんもあの人にもう一度出会うことは出来なかっただろう?」
「…そうですか…?」
「そうだよ…。基寿のお陰だ…」
「だといいのですが…」

石川は微笑んで岩瀬をギュッと抱きしめた。

「悠さん?」
「ん…基寿の確認。」
「…なんですかそれ?」
「…静音さんと話してて、思ったんだ…」
「・・・・・」
「もし、彼女達みたいに何百年も離れ離れになったとしたら…」
「どうします…?」
「ん…俺は…約束には縛られない…」
「…え?」
「たとえ、どんなに離れていても。俺はお前を探し出す。何百年かかっても…」
「悠さん…!!」
「同じ何百年だったら…少しでも可能性の高い方へかけてみるだろう…?」
「そうですね…」
「だろ?」
「…あ!」
「どうかしたのか?」
「…もし、悠さんが俺を探しに来るとして、俺も探しに出かけるとしたら…?」
「その時は…」
「まぁ。何処にいても。悠さんを見つける自信はありますケドね!」
「うん…俺も…何処にいても基寿を見つけるよ…必ず。」
「はい!俺もです!!」
「基寿…」
「悠さん」

そっと寄り添う二つの影が、その夜、離れる事はなかった―



    **  **  **  **



翌日。



「おはようございます!隊長!!」
「おはよう」

次々と掛けられる挨拶に笑顔で答えながら、石川と岩瀬は食堂へと向かった―
そこには、西脇と橋爪が既にいて…。加藤も話に加わっていた。

「おはようございます。隊長」
「おはよう加藤…。昨日は有り難うな…それで…」

石川が些か言いにくそうに、切り出すと。
既に解っているのか、加藤は笑って―

「もう、大丈夫です。例のお姫様もあの人も。無事に…」
「そうか…よかった…」

自分の命が危険だったにも関わらず。
悲しい恋の結末を辿った恋人達を心配する石川に加藤は
『あぁ…だから隊長が選ばれたんですね…。全くこの人は…でもそれが石川隊長なのだし…』
と苦笑気味に思ってしまった―

そして石川は橋爪と西脇と話しはじめる―

「おはようございます。石川さん」
「おはようDr。昨日はありがとう。」
「いえ…顔色も良いようですし…ですが余り無理はしないでくださいね…」
「うん…西脇も、迷惑を掛けたな…ありがとう」
「いえ…無事でなにより…」
「あぁ…」

石川が西脇達と談笑している間に、岩瀬は加藤の近くへと、そっと近づいた。
実は昨夜から気になっていることが一つ。それは―

「おはようございます。補佐官」
「おはようございます」
「…どうかしましたか…?」
「いえ…その…」

岩瀬が言いにくそうにしていると、何事かを察した加藤は、ゆったりと微笑んで…

「ここでは不味い話ですか?」
「えぇ…まぁ」
「では…」

二人してコッソリと食堂の片隅へと移動して。岩瀬が言いにくそうに口を開いた。

「その…加藤さんはもしかして…」
「あぁ。隊長と補佐官の関係ですか?」

サラリと。加藤が口に出したのは、秘密にしている二人の関係の事で…

「う…まぁ…」
「知ってましたよ?」
「え…!?何時から…?」
「そういう関係になる前からですが…」
「なんで!!!」
「解りますよ?」
「えぇぇぇ…!?」
「秘密にしなくても…お似合いですよ?」
「!!!…有り難う御座います…」

加藤の言葉に目を見開き。そして照れた微笑を浮かべる岩瀬は本当に幸せそうだった。
そんな岩瀬を見て、加藤は―

「でも大丈夫ですから。秘密でしょう?他言はしません。」

加藤がニッコリと笑ったときに、岩瀬を呼ぶ石川の声がした。

「隊長が呼んでますよ?」
「え…はい…その加藤さん…」
「はい?」
「加藤さんが知っているという事を隊長にも秘密にお願いします!!」

岩瀬の必死さに、思わず笑ってしまった加藤だが…。優しい微笑を浮かべて―

「それも大丈夫ですよ。ご安心を」
「有り難う御座います!!じゃ…」
「えぇ」

そう言って石川の元へと走っていく岩瀬の後姿を見て。
加藤はそっと呟いた―


「…まさかオーラで解りますとは…言えませんよね…」


苦笑を一つ。そして食堂を見渡す加藤の目には―
そこかしこで、優しいオーラを出している幸せバカップルが映っていた…
その中でも一際、ラブラブ度が高いのが…我らが隊長と補佐官だとは決して言えない…。

「公然の秘密…か。でも秘密は秘密。ですからね…」

加藤の呟きは誰に聞かれることもなく。
空に消えていった―


- 終話 -





アトガキトーク。(寧ろ言い訳。)


はい。という事で大変長い連載となった木蓮の最終話です。
…長かった…(^^; 
そして最後までお付き合いくださった皆様!
有り難う御座います〜〜(T_T)←嬉泣。

ではでは。またーーvv


(06.05.13-06.09.24)

+ top +