【みんなのうた。】


穏やかな秋の午後。
石川と岩瀬がのんびりと公園を歩いていると、すれ違った母親と幼子が、楽しそうに歌を歌っていた。

「「迷子の迷子のコネコさん〜♪」」

そんな親子の後姿を何気なく見送った石川は、岩瀬の口元に乗る小さな微笑を見つけた。

「…どうかしたのか?」
「え。なにがですか?」
「いや…なんだか楽しそうだから………」
「あぁ…ちょっと昔の事を思い出して……」
「昔の事?」
「えぇ。海里の事なんですが……」
「海里ちゃんの?」

意外な名前が出てきて、石川は少し驚く。
そんな姿も可愛いなぁ。と思いながら、岩瀬は話を続けた。

「海里がまた1歳チョットぐらいの頃なんですが、さっきみたいに母さんと歌を歌ってたんです。」
「歌を?」
「えぇ。しかも偶然にもさっきと同じ【犬のおまわりさん】なんですが。まだ、全部は歌えなくて、『わんわんわわーん』の所だけタイミングよく歌うんですよ。で……」

そこで、ふふ…と小さく方を震わせる岩瀬を不思議そうに見て、石川が続きを促す。
思い出し笑いを残したまま、岩瀬は―――。

「普通は『わんわんわわーん。わんわんわわーん』なのに…何度教えても『わんわんわわーん。にゃんにゃんにゃにゃーん』って必ず歌うんですよ!
 しかも最後には『わんわんにゃにゃーん』に………」
「それは………」

幼い海里の、衝撃の短縮術に石川の肩も震える。
岩瀬は昔を思い出して、完全にツボにはまっている…。
そして、二人は顔を見合わせ―――

「あっはっは…海里ちゃん……かわいいな……ッッ!!」
「でしょ!!」
「面白すぎる…!!」
「もー。ホント最高でしたよ!!」



遠い海外にいる海里を思い浮かべ。
晴れ渡った秋の空に、二人の軽やかな笑い声が響いていった―――。




後日。

つい話題に上った石川からの報告(?)により、海里のお怒りを岩瀬が食らうののはまた、別のお話で………。




「ほんっと!お兄ちゃん最悪ッッ!!!今度、悠兄さんに、お兄ちゃんの恥ずかしい過去をばらしてやる!!!!」



はたして、岩瀬の運命やいかに!?












2009.10.20 UP














つづきません…ヨ。(笑)