今までも。これからも。




忙しい時間も終り、石川と岩瀬は部屋へと戻っていた―
そして岩瀬はゴソゴソとクローゼットから『なにか』を取り出し、ニコニコしながら石川へと近づいてくる。
そして…

「はーるーかーさん!」
「なんだ?」
「コレ…俺の気持ちです!!」
「…は?」
「…今日は14日。バレンタインです!なので、俺の気持ちを悠さんへプレゼント!」
「あ…」

バレンタインの事などすっかり忘れていた石川はカレンダーを見て固まる。
そして岩瀬からのプレゼントを受け取りながら、申し訳なさそうに見上げ…

「ゴメン…忘れてた…」

ションボリと呟く石川に、岩瀬は慌てて言い募る。

「いいんですよ!悠さん、忙しかったし…忘れてて当然ですよ!」
「でも…基寿は覚えてたし…」
「俺は…イベント好きだからですよ…それに」
「それに?」
「悠さんへプレゼントする口実になりますし?」
「基寿…」

優しすぎる恋人の、優しいこじつけに石川は微笑んで。

「…有り難う…基寿。俺はお前に貰ってばかりだ…」
「悠さん…」
「何時も有り難う…基寿には本当に助けられているし、頼りにしてるよ」

岩瀬へギュッと抱きつき、石川はとつとつと話し始める―
驚いた岩瀬は、それでも抱き締め返し、石川の言葉を静かに聞いていた。

「本当に何度、助けられたんだろうな…テロからだけでなく、俺が沈んでいる時も、側にいてくれたり…」

そこで石川は岩瀬を見上げ、ふと、懐かしむような眼をした。

「悠さん?」
「あの時…俺が記憶をなくした時だって…どれだけ基寿の存在が大きかったか…」
「…泣いちゃうほど?」
「…うん…お前の姿がないだけで、本当に辛くて、悲しくて―不安に押しつぶされそうだった…でも」
「…でも?」
「基寿が会いに来てくれて…そして恋人同士だと知ったとき、どれ程嬉しかったか…」
「…解ります…俺も記憶をなくしたとき、悠さんと恋人同士だと知って、凄く嬉しかったですから」
「基寿…」

岩瀬が、頬へそっと手を添えると、石川はゆっくりと瞳を閉じて、掌の体温を感じ取る。

「基寿…これからも俺とずっと一緒に居てくれ…」
「はい」

岩瀬はそのまま口付けて、石川を抱き締める。そして―

「…悠さんがいないと、俺は生きていけませんから!!」
「基寿…俺も…基寿なしでは…生きてはいけない…から…」

石川からの嬉し過ぎる答えに、可愛すぎる恋人を思い切り抱き締め、そしてベットへと倒れこんだ。

「悠さん!」
「うわぁ!!」
「もう…そんな可愛い事言ったら…止まりませんからね!?」
「基寿?」
「…悠さんは俺に貰ってばかりだといいますが…俺の方こそ、悠さんに貰ってばかりです!」
「え?」
「俺は悠さんにイロイロと貰っていますよ?」
「…例えば?」
「例えば…何気ない『言葉』とか『態度』とか…それに…」
「それに?」
「『悠さん自身』も…」
「!!」
「だから…そんなに気にしないで下さい!」
「でも…」
「人には『得手』『不得手』がありますから…俺は『今のままの悠さん』が大好きなんです…」
「基寿…」
「だから、俺のために無理して変わらないで…ね?」
「…うん…ありがとう…」

何処までも優しく、そして心からの岩瀬の言葉だからこそ石川は素直に頷ける。

「これからも宜しくな…基寿」
「はい。よろしくお願いします」

ニッコリと笑う岩瀬へ石川は、微笑んで。
これから先も、一緒に居られるように…そう願うのであった―



                                                       2007.02.09 UP