- 嘘はつかないで -
04.12UP ともっち【24/7】
それは石川の誕生日の前の夜。

    
その日は朝から天候が悪く、大雨の一日だった。
石川と岩瀬は明日が石川の誕生日。という事で休みを取り、出掛ける予定を立てていた―
そして、岩瀬が窓の外を見て呟く。

「雨…やみそうにありませんね」
「そうだな」
「折角、明日は休みを捥ぎ取ったって言うのに… 明日は晴れますよね?」
「天気予報ではそう言っていたな」
「よかった!じゃあ、楽しみにしててくださいね!」
「あぁ。楽しみだな」
そう言って、笑う姿は大変可愛らしく…
岩瀬は既にメロメロ状態だった。

『悠さん…可愛すぎ!!』

そうは思っても、実際に口に出すと怒られるので言わないが…
思ったことは顔に出やすいもので。
一人ニヤニヤしていると…

「…基寿… 顔がだらしないぞ…」
「え!そうですか?」
「…なんかヘンな事、考えてただろう…」
「そんな事ないですよ!ただ、『悠さん可愛いなー。』と…」
「それがヘンな事だ!!」

―バシッ―

言葉と同時に石川の手が出る。

「痛いですよー。悠さん」
「全然痛がってないじゃないか!」
「えへ。バレました?」
「…まだ、顔が戻ってない…」
「…嬉しくて…」
「なにが?」
「こうして、悠さんの誕生日をお祝いできるのが…」

急に真面目な顔になった岩瀬は石川の手を取り、そっと掌に口付ける。

「来年も。再来年も。その後も。ずーっと一緒にお祝いしましょうね!悠さん」
「…基寿…」
「あ!嘘じゃないですよ?」
「うん…」
「もし、悠さんが嫌がっても一緒ですからね!」
「…あぁ…」
「誓います。貴方と共に、これからも」
「俺も… 誓うよ。基寿とずっと一緒だと。」
「じゃあ!」

しんみりした雰囲気を変えるように岩瀬は明るい声を出し
石川の小指に自らの小指を絡める。そして…

「ゆーびきりげんまん、嘘ついたらハリセンボンのーます。」
「「ゆびきった」」

絡めた指先から伝わる暖かい気持ち。
この約束が何時までも守られるように―
二人で時間を重ねて生きたい。と…願う夜だった。