― それは 何時もの風景 ―
お昼時も過ぎた頃。遅い昼食を食べ終わり、お店を出たところであった…
「こらっ!基寿!今の勘定、お前800円多く払っただろう?返すから!!」
「え〜悠さん、それくらいいいですってば。
先に寄った店で、悠さん650円多く出してくれてるし。ちゃらにしましょ!」
岩瀬が言っているのは午前中の立ち寄ったカフェでの事だ―
「い〜や、良くない!第一俺の方が年上だし、給料も多いんだから多く払うのは当たり前だ!」
「でも、誘ったのは俺ですから〜」
…暫し、水掛け論を繰り返す。
すると、岩瀬がポン!と手を叩き…
「じゃ、こうしません、悠さん!」
「どうするんだ、基寿?」
「…俺にキスしてくれるってことで〜」
「…お前…俺のキスは800円か?」
「いえ!そんな事はないんですが…」
800円のキスと言われた石川は、目をすがめて…
「…800円分でいいんだな…?」
「悠さん!?」
石川は岩瀬の胸倉を掴み…頬っぺたに掠めるようなキスを一つ。
「は、悠さん!?」
「800円返したぞ。」
「え!?」
「基寿は650円だったな?返してもらおうか、同じ方法で。」
妖しく微笑む石川に撃沈な岩瀬であった。
― これ以降、デート代は“折半で。”となったのであった… ―