夏模様
「・・・クリスマスカード?」
「はい・・・こいつはジョンって言うんですけど、養成所時代の同期なんです・・・が、ちょっと変わったヤツでして」
そう言って笑う岩瀬はどこか楽しそうで―石川は岩瀬に葉書を送ってきた相手に興味を持った。
「どんな人なんだ?」
「えぇ・・・SPとしてはトップクラスの実力を持っていたのに、突然『牧場主になる!!』と言ってオーストラリアに移住したんですよ・・・」
「それは・・・凄いな・・・」
「でしょう・・・でも、彼は『護る』よりも何かを『作り出す』ほうが向いていると思います・・・」
「?」
「見た目は派手だったんですが・・・中身は驚くぐらい純情で・・・そして凄く優しいヤツで・・・」
「そっか・・・」
「えぇ。そして毎年、クリスマスにはカードを贈ってくれていたんですが・・・俺が日本に来てから今年、初めて来ましたね・・・」
「へぇ・・・」
そして石川は手渡された写真を見る―
写真にはジョンとその隣で笑う優しい感じの女性、そして3歳ぐらいの男の子が二人。子供達はサンタクロースの格好をしていた・・・が。サンタの服は半袖で。
「・・・サンタの服が半袖だ・・・」
「えぇ。オーストラリアは真夏にクリスマスが来るんですよね・・・」
「そうなんだよな・・・なんか変な感じだな」
「えぇ」
クスリと笑う石川につられ、岩瀬も笑う―そして・・・
「どうやら、ここ数年カードが届かなかったのは子育てが大変だったみたいですね・・・『子育てが大変だ!でも楽しい!!』って書いてあります・・・」
「あはは・・・そうだな子育ては大変だもんな・・・」
石川は昔を懐かしむように微笑んで、頷く。そんな石川をそっと抱きしめ・・・
「悠さん!いつか、ジョンの所に遊びに行きましょうね!」
「・・・?」
「だって。ココに書いてます・・・『可愛い恋人と一緒に遊びに来い!』って」
「え!?」
「そして半袖のサンタに会いに行きましょう!」
「・・・そうだな。うん。約束だ―」
「はい、絶対ですよ?」
「あぁ。絶対だな・・・」
クスクスと笑い会いながら―より添った影は離れることなく・・・
クリスマスまで後5日―
2006.12.20 UP