futari


去っていく浅野を見送っていると、背後から声を掛けられた―

「潤?誰か来ていたのか?」
「鷹夜さん・・・浅野がコレを」

そう言って池上は『お裾分け』と言ってくれたケーキを見せる。
そのケーキを見て、岸谷は「出来たんだな・・・」と。一つを手に取り、端を少し齧る。そして軽く頷き―
「まぁ、大丈夫なんじゃないかな・・・」と呟いていた。そして池上を見て・・・

「早速食べるか?」
「はい」

二人でテーブルに向かい合い、食べ始めた。

「あ。美味しい・・・」
「あぁ。浅野も腕を上げたよな・・・
「鷹夜さん・・・それは本人に言ってあげないと・・・」
「あいつは、誉めると直ぐに舞い上がるからな。今で丁度いいんだよ」
「・・・ふふ・・・」
「潤?」
「まるでクロさんみたいですよ?今の」

池上の口から『クロさんみたい』と言われたことに少なからず衝撃を受けた岸谷は、眉をひそめ・・・

「アレと一緒にしないでくれ・・・」
「そんなに嫌がらなくても・・・」
「・・・(嫌だろう)・・・」

難しい表情の岸谷をよそに、池上はクロウについて話し始める―
仕事中は物凄く頼りになる―とか。
あぁ見えて実は世話好き―とか・・・
しかも、嬉しそうに話しているのを見て、岸谷は苦笑する。そして・・・

「潤。いい加減俺の方を見てくれてもいいんじゃないかな?」
「鷹夜さん?」
「さっきも言ったが・・・俺の『幸せ』は潤が握っているんだけど・・・?」
「///鷹夜さん」
「で。そろそろ『幸せ』を実感したいんだけど、潤は?」

ニッコリと微笑んで、岸谷は池上の手を取る。
それに微笑を返して―

「はい。僕も『幸せ』を実感したいです・・・」

池上は引き寄せられるままに、瞳を閉じた。


 + + +


「クロさん!お待たせ!!―うわぁ!!!」

浅野は部屋のドアを開けるなり、中から伸びてきた腕に引き込まれる―そこにはクロウが仁王立ちで待っていて・・・
「遅い」と一言告げてくる。それに溜息をついて、小さく呟く「・・・ホント我が侭だよね・・・」と。そして―

「・・・はい。お待たせしました!新作ケーキでっす」

じゃーん。と効果音つきで出されたトレーにはホワイトチョコのケーキが並んでいて―そのなかで、一つだけ違う形のケーキが並んでいた・・・

「これは・・・ツリー?」
「そうなんだよ!余ったスポンジで作ったんだけど・・・可愛いでしょ!クロさん用の特別仕様だからvv」
「・・・・・」
「クロさん?」

ツリーの形をしたケーキをじっと見ているクロウに浅野は『どうかした?』と問いかける。が、あっさりと首を振りクロウはソファへと腰掛ける。そして、『特別仕様』と称されるケーキを手に取り齧った。

「・・・うまい・・・」
「えっっ!ホント!!」
「あぁ・・・嘘をついて如何する・・・」

モグモグと食べ続けるクロウはどこか嬉しそうで―その様子を見ていた浅野は思い切り破願した。

「やったーーvv頑張った甲斐があったよ!で。どう?くどくない?」
「甘さも丁度いいし、全体のバランスもいいんじゃないか?」

最後に指に付いたクリームを舐め取り、クロウはニッコリと微笑んだ。それを見た浅野はガバッと抱きつき・・・

「・・・どうしよ・・・マジで嬉しいんだけど・・・」
「れの?」
「だって!クロさんに誉められるって・・・」
「俺だって、たまには誉めるさ」
「そうなんだけど!でも・・・」

更に抱きしめる腕に力を込め、浅野は囁いた―

「クロさん・・・ありがと」
「・・・ナニが?」
「・・・んと・・・いろいろ・・・」
「なんだそれ・・・」
「えっと・・・上手く言えないんだけど・・・これからもいっぱい我が侭言ってね?」
「今以上に・・・?」
「う。・・・うん」
「・・・あっははは・・・!れの、お前は最高だな!!」
「クロさん?」
「いいんだな?今以上に我が侭になっても」
「え・・・うん。でも!」
「ん?」
「その我が侭を言うのは俺一人だけにしてよねっっ!!」

浅野の真剣な様子にクロウは微笑みで返して―

「覚悟しろ?れの」

浅野の返事はクロウの唇へと吸い込まれていった―




クリスマスまであと8日―








2006.12.18 UP