それは仲間うちでお酒を飲んだ晩の事でした。
フワフワと良い気分になった悠さんは、お酒の力も借りてウトウトと眠りに就いたのです。
お酒を飲んだ悠さんはとても可愛くて、番犬わんこの岩瀬は気が気ではないので、眠ってくれてホッとしてました。
しっかり寝付いたのを確認した岩瀬は、ホッと一息ついてお風呂に入りに行ったのです。
まさかその隙に悠さんが目覚めるとは思わずに・・・

ポヨポヨとした感じで目覚めた時、いつもとなりに居る岩瀬の姿がありません。

「もとひさ〜どこ〜」

いつもは目覚めると横にいる岩瀬の姿がなく、悠さんは掛けられていた毛布を手にペタペタと歩き出します。

「もとひさ〜どこへいったの?」

お酒を飲んだ後でフワフワしている上、寝ぼけているので思考がハッキリしてません。
お部屋の中を見回しても、見当たらず、困った悠さんは毛布を持ったまま部屋の外へ。
ちゃんとお風呂場を覗けばそこにいたのですが、そんな事浮かぶはずもありません。
毛布を手にポワポワ悠さんは岩瀬を捜し歩き出します。

「もとひさみなかった?」

表に出た悠さんはみんなに聞いて廻ります。
けれど誰も知らないと応えます。

「も〜と〜ひ〜さ〜。どこ〜」

誰も知らないと応えられ、悠さんは哀しくなってしまいます。
手に持った毛布を握りしめるように、悠さんはフラフラと屋上へ続く廊下を歩きます。
何かあると必ず基寿が居る場所。
星空が見えるその場所を基寿が好きだと知っているから。

悠さんが基寿を探し歩いている時、お風呂から出てきた基寿は焦りました。
何故なら、そこに悠さんの姿が無かったからです。
慌てた岩瀬は急いで足跡を探します。
まるで悠さんの匂いを追う犬のように、パタパタと走り聞いて廻ります。
そして悠さんが屋上へ向かったと知ると、全力で走り出しました。

基寿が悠さんを探して走り出した時、悠さんは屋上にでて星空を眺めていました。

「きれいだなぁ〜」

煌めく星空が綺麗だと教えてくれたのは、基寿でした。
辛いことも星空を見ると忘れますよと―――

「もとひさ〜どこへいったの?きれいだけど、さびしいよ・・・」

思わずこぼれ落ちるそんな言葉。
胸が詰まってギュッと毛布を抱きしめた時、フワリと暖かい温もりが悠さんを包みました。

「はるかさん。きゅうにいなくなったから、びっくりしましたよ?」
「あっ、もとひさ〜どこへいってたの?」
「ごめんなさい。さびしいおもいをさせて」

少し涙の浮かんだ瞳を見て、同じ部屋にずっと居たとは云えず、基寿はそう応えました。
そんな基寿を見て、悠さんはフワリと微笑んでギュッと抱きしめる基寿の手を包みます。

「だいじょうぶ。いまはいっしょにいてくれるから。もうどこにもいかない?」
「はい。いきません。ずっとそばにいますね」
「うん。それならいい。ふたりでみるともっとほしがきれいだね・・・」

そんな言葉と最高の笑顔を浮かべ、悠さんは再び眠りに就きました。
その後基寿は悠さんが星空に包まれた夢が見られるよう祈りながら、決して離れないと星空に誓うのでした。



【星の光へ思いをこめて】 未沙樹 作 06.11.26UP