違う腕の中で…

 

――――明るい日差しの中でここだけが、濃密な夜の気配に支配される。――――
 
夫とは違う手の中で乱れていく自分に呆れながらも、その行為を止められない…。
そして今日も、背徳的な行為に沈んでいく。


 ― いつまでこんな事を続けるつもりなんだ…? ―



いつかは夫にもばれてしまう…。あの優しい、暖かい男に。
そのとき、俺は?

貫かれる感覚に背中がのけぞる
「…っつ…あぁ!…」
「悠…何を考えている?」
ゆるゆると腰を使い男が問う。

「んっ…何も…はぁっ……」
薄っすらあけた瞳には欲情以外の感情は見当たらない…

「悪い子だね、悠。」
「?…何が?…ふっ…うんっ…」
「君は今、あの子のことを考えていただろう?」
「ぁあ…そんな…ことは…」
「無い…と?」
「…んん…」
「仕方ないね…悠…言ってくれないと解らないよ…?どうしてほしい…?」


― もっと激しく…してほしい ―


もう、すでに羞恥心は無く。


「はぁっ…もっ…と…」
「…何?…」
「…奥まで…ほし…い」

それを聞いた男は -くつり- と嗤い…
激しく責め立てる  

そして―

さらに激しくなった行為に悠は意識が飛びそうになる。

もうお互い限界が近い―

「本当に悪い子だね…。」
「ああぁ!!…もうっ……」

二人で同時に果て、ソファに沈んでいく…。
 

「悠。嫌になればやめていいんだよ?キミ次第だ。」
「…。」

この男はズルイ。“やめれるものなら、やめてみろ”と云うのか?
そして、何もかも俺に決定権があるかのように振舞う…。

「もう、こんな時間か。そろそろ戻りなさい。」
「…はい。…」



そろそろ夫が帰ってくる時間だ。


『シャワーを浴びなくては…。』


つい、今しがたまで交わしていた行為が嘘のように、急速に日常に戻っていく。
サッとシャワーを浴び、夫の好きな料理を作り、帰宅を待つ。
 

「ただいま〜悠さん。」
「おかえり、基寿。」
ふんわりと抱きしめられる。
「あれ?お風呂入ったんですか?」
「あぁ。ちょっと汗をかいたからな。」
「一緒に入ろうと思ってたのに…。」
「またな。ご飯が冷めちまう、早く食べよう。」
「はい!お腹へった〜」
「はいはい。今日はお前の好きなものばかりだぞ。」
「ホントですか?早く食べましょう。」

他愛のナイ会話を交わしながら食卓に着く。
基寿の話に笑いあいながらもココロの何処かは昼間の男を思っている。

どちらの腕の中でも違う男の事を考える。


― 俺は最低だな。 ―
 
そして今日もほんの少しの後ろめたさを感じながらも夫の腕の中に戻っていく。

 

                                    - 了 -

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【あぷりこっとおれんじ】様にささげた物を再録しました。
そして、ほんのチョコット書き足したり…
…難しいですね… 裏仕様は(苦笑)
精進します。  06.02.09