美我空 〜 My Beautiful Sky 〜 【3】











空が好きだった父さんと母さん。
美しい朝焼けの空を見上げ、両親の事を思い出す。


こんな風に、穏やかな気持ちで空を見上げれるようになるまで何年かかっただろうか…?


もし、あの時。 GDに入隊しなかったら―――。
もし、あの時。 基寿に出会わなかったら―――。
もし、あの時。 基寿の手をとらなければ―――。


今の俺はいなかっただろう。こんな穏やかな自分は…


そんな事を思っていたら―――






「悠さん?どうかしましたか?」

そう言って覗き込んでくるのは、心配性な恋人。
少々、過ぎるほどの過保護っぷりを発揮する年下の恋人は今も眉間に皺が寄っている。
そんな岩瀬に軽く微笑み、小さく首を振る。

「別に、なんでもないんだ…。ちょっと昔の事を思い出してただけ」
「昔の事…ですか?」
「あぁ、両親との思い出なんだけど…」


両親との思い出、という言葉に岩瀬が更に難しい顔をする。


― 聞きたいけれど、聞いてはいけない―


SPのくせに感情が顔に表れすぎだ。と思うけれど、俺を思っての事だと思うと、なんだか胸の内がくすぐったくなる。
クスリと笑うと、それに気づいた岩瀬が少しむくれた顔でそっぽを向く。
そんな仕草が可愛くて、更に笑みを深めると――。

「…悠さん、俺の反応見て楽しんでる…」
「わかったか。」

ペロリと舌を出しておどけてみると、岩瀬は直ぐに破顔して。

「もぅ…悩んでる俺が馬鹿みたいじゃないですか。」
「はは。ゴメンゴメン。そうじゃなくて………」
「悠さん?」
「俺は幸せだな…って。実感してただけ」












   * * *











「ねぇ、悠。いつか、こうやって一緒に空を見上げてくれる大切な人がきっと見つかるわ。その時は母さんにも教えてね。」



そう言って笑った母さんの顔をよく覚えている。
その時は、恥ずかしくて、照れくさくて…ぶっきらぼうに「いつか…」としか言えなかったけれど。
本当は嬉しかったんだ。



【何時か俺だけの誰かに出会えるように。】と願う母さんの気持ちが。



優しく笑った母さんとの約束は果たせなかったけれど。
一緒に空を見上げてくれる大切な人は見つかったよ。
これからずっと、一緒に生きていく…とても大切な人なんだ。
だから、どうか。この空の下、父さんと二人で見守ってくれるかな、俺たちの行く末を。


この、美しい我の空で――――




























2009.06.14 UP