美我空 〜 My Beautiful Sky 〜 【1】
「『これから先、同じ空を見上げて欲しい…』父さんったら、そう言って真っ赤になっちゃって…」
「へぇ。父さんって案外ロマンティストなんだね」
「そうよ。カワイイんだから」
「…そう思うのは母さんだけじゃない?」
「ふふ…そうかもね。悠にもいつか、【同じ空】を見てくれる人が現れるわ」
「…そうだといいけど」
「その時は母さんにもちゃんと紹介してね」
「はいはい」
そう言って笑った母が他界したのは一ヵ月後だった―――。
* * *
「にーちゃ。おかあしゃんは?」
足元から見上げてくる幼い瞳に直ぐには答えられず、思わず声を詰まらせる。
そんな僕の右手を握って、晋が声を上げずに涙する。
「すすむにーちゃ。ないてゆの?」
登の言葉に、晋は首を振るだけで何も言えない。
唯、立ち尽くす僕たち三人を優しく包んだのは父さんの大きな手だった。
「登…母さんはお星様になったんだ」
「…お星様?」
「そうだ。これからもずっと、お前たち三人を見守る為に…」
「…おかあしゃん、お星様だと夜しか会えないの?」
急に寂しくなったのか、登が泣きそうになりながら聞いてくる。
晋は、それに泣き笑いの表情で。
「昼間でも星は見えてるよ。だからズーッと一緒だよ」
「ほんと?はるかにーちゃ」
「ホントだよ、登。ね、父さん」
「あぁ、母さんはずっと見てくれてるさ…」
よく晴れた日の朝。
四人で大泣きしたのはあの日が最後だった。
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2009.04.20 UP