「何時から…聞いてたんだ!?」
俺はその一言だけがグルグルと頭の中を回っていて―
【言ってやりたい事は山程もあったが取り敢えず言うべき事はひとつだけ】
ダカダカと歩く俺の後を岩瀬が追ってきていて。
ソレにも気付いていても、とてもまともに顔を見る自信がなくて。
更に足を速めた―
そして、公園の手前で岩瀬が追いつき…
「待ってください!悠さん!!」
「来るなっっ!!!」
「嫌です!」
「・・・・・・・・」
「悠さん!!」
後ろから掴まれた腕は、きつくて…
「…いたい」
「すみません…」
見捨てられた子供のような表情で岩瀬が覗き込んでくる。そして―
「悠さん…怒っていますか?」
「・・・・・・」
「悠さん?」
「…怒っては…いない…でも…」
真っ直ぐに見てくる岩瀬を見返せなくて。
顔を背け、ポツリポツリと今の心境を口にすると、岩瀬は明らかにホッとした表情を浮かべ…
「じゃあ…少し話しませんか?」
「……うん…」
俺は岩瀬に手を引かれ、夜の公園内へと足を踏み入れた。
そして、誰も乗っていないブランコへと二人で腰掛け―
ゆっくりとこぎ始めた…
「悠さん、落ち着きました?」
「……うん」
俺の事など『何もかもお見通し』な岩瀬にチョットだけムカつきながらも…
先ほどまでの『恥ずかしさ』や『いたたまれなさ』などは、すっかりとなりを潜め。
その代わりというか…なんというか。
今度は激しく後悔が押し寄せる―
「ゴメン…」
「悠さん?」
「基寿…俺…お前がいるなんて思ってなくて…」
「……」
「だから…さっきのは…本心だけど…でも…」
「………」
「本当は…聞かれたくなかった…」
「何でですか…?」
「だって…恥ずかしいし…!!」
「そんな事無いですよ?俺は…嬉しかったです」
「基寿?」
「悠さんがあんな風に俺の事を思っていてくれたなんて…本当に嬉しいです」
「基寿…」
俺を見て。
優しく、そして心から嬉しそうに微笑む岩瀬を見て。
俺は言いたかった事の殆どを忘れてしまった…
たった一つをのぞいて。
だから、その一言だけを口にしよう―
何時も真っ直ぐに、俺だけを見ていてくれる恋人のために…
「基寿…俺はお前が好きだ…」
【たくさんの命の中で貴方に出会えた事】へ続く。
2007.04.30 UP